「笹原さんて、目標聞いてこないですよね。」
コーチング慣れをしているクライアントの方からよくいただくコメントです。

たしかに、多くのコーチングの現場で、最初に交わされるのは
「今回のセッションで、どんな目標を達成したいですか?」
という会話です。
でも僕は、セッションの冒頭でいきなり目標を聞くことは、ほとんどありません。

これには、僕なりの理由があります。

1 完璧な目標への違和感

普通はいきなり目標を聞かれて、スラスラと答えられる人はそう多くありません。
「え?」と戸惑うことがほとんどです。

それは能力の問題ではなく、単純に「慣れていない」だけのことです。
普通に生活をしていて、いきなり他人に「目標」を聞かれる場面にはなかなか出会わないので、当然といえば当然の反応です。

一方で、問いかけた瞬間に、淀みなく、非の打ち所がない目標を語れる方もいます。
知的水準が高く、地頭が良い方に多い傾向です。

その目標は、とてもカッコよく、ロジックも通っていて、完璧に見えます。
でも僕は、その完璧さに違和感を抱いてしまいます。

「目標って、そんなに急に、きれいにな言葉にできるものなのかな?」と。

2 目標とは「圧」でもある

本当の望み。
心の底から達成したいこと。

それを言葉にするのは、本来とても勇気がいることです。

少し怖かったり、誰かに言うのが恥ずかしかったりする。
ある意味で、自分の心の奥底を見せるわけですから、自然な反応です。
僕も、本心をさらけ出すには、それなりに覚悟が要ります。

それを他人から「さあ、目標を出してください」と迫られると、多く人は「圧」を感じてしまいます。

立派に整えられた目標は、時にその「圧」から自分を守るための鎧(よろい)になります。
「こう言っておけば間違いない」という生存戦略。

僕は、その鎧を鑑賞するためにセッションをしているわけではありません。

3 目標は大切

もちろん、目標設定そのものを軽視しているわけではありません。
むしろ僕は、目標を定めた後にそれを加速させる、前に進みながら、より高い目標に上方修正していくことは得意です。

行動を設計し、停滞を見抜き、推進力を取り戻すこともできます。

ただし経験則上、 「最初に出てくる綺麗な目標」は、まだ本心ではないことが多い。

本心から出ていない目標は、どれだけ緻密に戦略を組んでも、どこかで必ず失速します。
正直、クライアント本人のやる気に繋がりにくいからです。
上司の命令で厭々やっている仕事に近い感覚です。
だから僕は、「目標」を急がないのです。

4 一緒に待つ時間

僕が大切にしているのは、お互いの強さも弱さも見せられる状態をつくること。
その状態の中で、まだ言葉にすらなっていない違和感や震え、ちょっとした興奮が、自然とこぼれ落ちる瞬間を待つこと。

「目標は、まだ分からなくていいですよ」
「僕のお客さんは、目標は分からない人の方が多いですよ。」

そうお伝えした瞬間、肩の力がふっと抜ける方は少なくありません。
そこからようやく、未来に向けた対話が始まります。
それが「何もしない」ことで生まれる世界観です。
『「何もしない」僕がやっている、クライアントを本来の自分に戻すということ』

5 そして、走る

本心から出てきた目標は、「綺麗な目標」とは性質がまったく違います。

このセッションをしていると、「最初の方で出てきた目標」と、「対話を重ねた後に出てきた目標」が全く同じ言葉で、クライアントの口から出てくることが良くあります。
それをクライアント自身に「結局、最初と同じ目標を言っているのが面白いですね。」と返すと、ほぼ全員が「本当だ(笑)。でも、全然違う感覚です。」と答えてくれます。

表面上は「同じ言葉」あっても、それはクライアントにとって「全く異なる意味を持つ言葉」です。
それは「やらなければならないもの」「やった方が良さそうなもの」ではなく、
「やらずにはいられないもの」
もしくは、「やりたくてしょうがないもの」

そこと繋がったとき、人は放っておいても自然に、そして速く動き出します。
なので、僕のセッションでは、クライアントに次の行動策定を聞くこともあまりありません。
勝手にクライアントが動き始めてしまう(だからと言って、無責任に放置するわけではありませんが)からです。

僕がしているのは、背中を押して、無理やり前に進めることではありません。
クライアント自身のエネルギーが、自発的に回り続けるように設計すること。
その状態が長く続くように、時々スキャンとメンテナンスをすること。

外から押すのではなく、内側のエンジンが回り続ける状態をつくる。
クライアント自身が「やりたいからやっている」とういう状態を、ただ一緒に確認する。
だからこそ、加速は速く、そして長く持続します。


目標は、最初に決めるものではなく、対話を通じて輪郭が現れてくるもの。

立派な目標というシェルターから一歩出て、本当の望みを引き受ける。
そして、そこに向けて本気で走る。

僕は、そんなセッションを大切にしています。

おしらせ

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