ご注意
これは、答えを早く欲しい人のための記事ではありません。
・本を読んで考え込む癖がある
・一人で内省する時間が苦にならない
・安易な答えに違和感を覚えやすい
この記事は、そんな「考える体力」「自己対話の体験」がすでにある人に限った話です。
※ 2026年1月13日現在、AIの進化を日常的に体感している立場からの、現時点での考えです。
はじめに
昨年後半あたりから、こんなお問い合わせをいただくことが増えました。
「笹原さんは、AIをコーチとして使うことに反対なのですか?」
先に結論からお伝えします。
答えは NO です。
むしろ僕自身は、日常的に複数のAIを使い、壁打ち相手としてかなり深く活用しています。
仕事の構想を練るとき、文章を書く前の思考整理、感情が動いた出来事の言語化。
人に頼むよりも気軽で、遠慮がなく、反応も速い。
正直に言って、「壁打ち」という用途に限れば、AIは僕の100倍以上有能だと思っています。
それにもかかわらず、これまでの僕の発信を読んでくださっている方の中に、
「AIコーチングに否定的なのでは?」という印象を持たせてしまっていたとしたら、
それは僕の言語化が不十分だったせいです。
※これまでのAIとコーチングに関する記事は下記を参照ください。
その1 『「優しさ」の裏に潜む罠 ~その「受容」と「共感」は誰のため?~』
その2 『AI時代における人間のコーチの固有価値 ~「覚悟の領域」について』
誤解を招いてしまっていた点があれば、率直に申し訳なく思っています。
ただし、ここからが少し大事な話です。
1 改めて「コーチングとは何か」
「コーチング」という言葉の定義は、人によって驚くほど幅があります。
目標設定のサポートを指す人もいれば、
内省の伴走、感情のケア、さらには人生観への介入まで含める人もいる。
だから僕は、すべての領域において
AIコーチングに無条件で賛成、とは言えません。
どこまでを「コーチング」と呼ぶのか。
その前提を揃えないままでは、議論がすれ違ってしまうからです。
そして僕はまだ、「コーチング」とは何かを明確に定義できていないからです。
2 AIコーチングが優秀に機能する条件
あくまでも僕の体感ですが、少なくとも、以下の条件が揃っている人にとって、AIは非常に優秀なコーチになります。
・自問自答にある程度慣れている
・自分の思考や感情を一段引いた視点で観察できる(メタ認知能力がある)
・AI以外にも、日常的に雑談できる人間関係がある
この条件が揃っている人にとって、AIは「安全で」「高速で」「疲れない」壁打ち相手として、これ以上ない存在です。
実際、僕のクライアントさんの中にも、AIを非常に上手に使いこなしている方はたくさんいますし、
それ自体を問題だと感じたことは一度もありません。
では、なぜそれでも僕は、人間としてセッションを提供しているのか。
なぜクライアントさんは、AIと併用して僕との対話を選ぶのか。
僕との対話の結果「思考の堂々巡りが止まった」「決断がすっきりと自然に出せた」
そんな感想をいただくのか。
それは、AIが苦手とする領域が、確かに存在するからです。
3 AIが扱いきれないもの、僕が引き受けるもの
例えば、本人もまだ言語化できていない違和感。
語りの中ににじむ矛盾や、感情の揺らぎ。
「正しそうな言葉」の裏に隠れている、触れられたくない前提。
こうしたものは、単なる質問と回答の往復では、なかなか浮かび上がってきません。
関係性の中で、間(ま)を共有し、沈黙を許し、言葉にならないものを一緒に扱う必要がある。
「今は問いを深めていいタイミングか」
「今は本人の時間を大切にした方がいいのか」
「この領域に、今踏み込んでもいいのか」
そうした非言語的な判断を引き受けること。
より長い時間軸、より広い視野で考えたときに、
「今は『問わない』」「今は『押さない』」という選択肢を持ち続けること。
それは、現時点では人間という存在に対する「尊敬」と「恐怖」という感情を持つ人間の役割だと、僕は考えています。

4 AIと人間のコーチングの、ちょうどいい関係
だから僕は、こう提案したいのです。
もし僕のコーチングに興味を持ってくださっている方がいたら、
まずはAIと、徹底的に壁打ちをしてみてください。
考えを整理し、問いを投げ、言葉を尽くす。
AIで解消できるものは、AIでいい。
むしろ、僕よりもAIの方が早くて、安くて、相談の心理的ハードルも低い。
その上で、それでもなお残る違和感や不安、
「ここから先に進めない感じ」
「自分自身の感覚への、ぬぐい切れない不信感」
そうしたものが残ったときに、初めて人間の介在を検討する。
そのくらいの距離感が、今のところ僕というコーチとの、最適な付き合い方だと思っています。
AIを使うことは、近道であり、同時に試金石でもあります。
それでも自分の中に残ったものこそが、
きっと僕と一緒に向き合う価値のあるテーマです。
AI時代だからこそ、人間の役割は、より明確になる。
僕はそう感じています。
5 ここまで読んでも考えてしまう皆さんへの1つの問い
あなたの今の「モヤモヤ」は、
AIで言葉にできそうなものですか?
それとも、言葉になる前のまま、
誰かと一緒に扱った方がよさそうなものですか?
もしその「モヤモヤ」が、
一人で扱うには少し重たいと感じたら、そのときは迷わず僕を使ってください。
それが、AI時代における一番賢い「使い分け」だと思っています。








