こんにちは。Genius Rushの笹原です。
先日、コーチ仲間と話をする中で、僕のセッション観を変えた、あるクライアントとのエピソードを思い出しました。
1 あるクライアントとの思い出
その方とは、僕がプロとしてコーチングを提供し始めた頃からのお付き合いです。
とある尖ったサービスを提供していて、多くのお客様から求められている方でした。
実力は十分にある。
お客様からも高く評価されている。
それなのに、一つだけ大きな悩みを抱えていました。
自分のサービスに価格を付けられない。
特に知り合いに対しては、
「知り合いからお金をいただくのは申し訳ない」
という思いが強く、十分な価値を提供しているにもかかわらず、価格を下げたり、無料で提供したりすることが少なくありませんでした。
2 投げかけられた、一つの問い
ある日のセッションで、僕はこんな質問をしました。
「『知り合いであること』と『お金をいただかないこと』の間には、どんな合理的な理由があるんだろう?」
返ってきた答えは、
「うーん……何でしょうか(笑)」
というものでした。
その場で何かが劇的に変わったわけではありません。
深い気づきが起きたようにも見えませんでした。
そこで僕は、その問いは一旦横に置き、別の角度からアプローチを続けました。
サービスの価値を整理し、他社との比較を交えながら価格設定を見直し、自分の仕事に対する評価を少しずつ上げていく。
その結果、そのクライアントは自分のサービスに適切な価格を付けられるようになっていきました。
そして、あの質問のことは僕自身、いつの間にか忘れていました。
3 一年越しの「伏線回収」
ところが、それから約一年後。
そのクライアントが嬉しそうに、こんなことを話してくれました。
「やっしさん、『知り合いだからお金をもらわない』ことに、合理的な理由なんてないって、急に分かったんです。」
驚きました。
僕はすっかり忘れていた問いを、その方は一年もの間、心のどこかに持ち続けていたそうです。
もちろん、あの一つの質問だけですべてが変わったとは思っていません。
実際、その結論にたどり着く前には、自分のサービスに値付けをし、収益率も倍近くまで改善していました。
でも振り返ると、どこかでまだ「知り合いからお金をいただくことへの後ろめたさ」は残っていたそうです。
数字は変わっていた。
行動も変わっていた。
でも、そのクライアントの本心だけはまだその変化を受け入れていなかった。
そして一年後、ようやく本人の中でその最後のピースがはまりました。
今では、自分のサービスの価値を自然に受け止め、納得できない価格で仕事を引き受けることはほとんどなくなったそうです。
4 本当の変化は、日常の中で起きる
僕たちは、セッションの成果を「その場」で判断しがちです。
「今日のセッションで何が変わりましたか?」
「どんな気づきがありましたか?」
もちろん、その場で大きな変化が起きることもあります。
でも、長年セッションを続けてきて思うのは、本当に人生を変えるような変化ほど、時間をかけて起きることが多いということです。
セッションが終わる。
仕事に戻る。
家族と過ごす。
新しい経験をする。
失敗も成功も繰り返す。
そんな日常の中で、以前投げかけられた言葉や、新しく得た視点が、ある日突然つながる。
「ああ、そういうことだったのか。」
その瞬間、本当の意味で世界の見え方が変わる。
僕はそんな場面を、何度も見てきました。
5 「二刀流」のセッション
誤解のないようにお伝えすると、僕は「一瞬で相手の世界観を変える」「たった一言でマインドセットを変える」というような関わり方も、条件が揃えば意図的に行うことができます。
実際に、その一言が人生の転機になったクライアントもいます。
でも、それはいつでもだれに対してもできるのもではありません。
十分な信頼関係があり、その人自身の準備が整い、その他さまざまな条件が重なったときに初めて起きる現象です。
つまり、「たった一言」自体に効果があるわけではありません。
その一言が届く状態、変化できる状態が整っていたからこそ、大きな変化が起きるのです。
そして、長期間クライアントをサポートしていると、そうした条件が自然に揃うタイミングは、実はそれほど多くありません。
もちろん、即効性が必要な場面もあります。
その時には、短期的な成果を生み出すためのアプローチを選びます。
でも、それだけでは十分ではないこともあります。
あのクライアントのように、行動は変わっていても、心のどこかに小さな違和感が残り続けることがあるからです。
だから最近の僕は、変化を急がせることと同じくらい、その人自身のタイミングを信じることも大切にしています。
人は、自分で腑に落ちた答えだからこそ、本当の意味で自分のものにできます。
僕の役割は、答えを教えることではありません。
その人が、自分自身で答えにたどり着ける状態、自分で選択・決断できる状態をクライアントと一緒につくることです。
問いを投げることもある。
新しい視点を提示することもある。
時には即効性のあるアプローチを使うこともある。
でも最後に世界が変わる瞬間は、いつだって本人の中で起きています。

6 セッションを越えて、続いていくもの
最近、昔のクライアントから、
「数年前に言われた言葉を今でも覚えています。」
「あの時は分からなかったけど、今なら意味が分かります。」
そんな言葉をいただくことが増えました。
そのたびに思うのです。
本当のセッションは、60分で終わるものではない。
セッションが終わった後、その人が日常を生きる中で続いていくものなのだと。
だから僕は、今日も目の前の一人と丁寧に対話をします。
その場で劇的な変化が起きなくても構いません。
今日の対話が、一年後かもしれない。
五年後かもしれない。
その人の人生のどこかで回収される伏線になるかもしれない。
そう思うと、セッションの60分という時間は、とても短くて、とても長い時間です。
だから僕は、今日という一時間だけではなく、その人の一年後、五年後にも届く対話をしていたいと思っています。
何かが気になった方へ
今日の違和感が、一年後の伏線になるかもしれません。
気になった方は、まずは一度お話ししましょう。









