こんにちは。Genius Rushの笹原です。

今日は「傾聴」について、少し本気で考えてみたいと思います。

※ この記事は傾聴の技術論ではありません。


1 ある受講生が「固まった」瞬間

僕はコーチングの他に、NLPトレーナーとしてセミナーを開催したり、人前で話すためのトレーニングも提供しています。

ある日、そのトレーニング中に、とても優秀で勉強熱心な受講生と話していました。
NLPの知識を丁寧に積み上げ、準備も真剣にしていた。
誰が見ても「この人はスゴい!」と思うような人でした。

でも、登壇の練習を見ていて、引っかかるものがありました。

そして、その受講生へのフィードバックとして、
「上手くやろうとしているうちは、ベクトルは自分に向いていると思います。
これまでの僕の体験上、学んだことをしっかりと自分のものにしたら、登壇してからはそれを全部忘れて、目の前の聴衆とその場に集中するのがいいプレゼンターのコツだと思います。」
とお伝えしました。

そう伝えた瞬間、その受講生は目と口を軽く開いて、しばらく固まっていました。
「私は伝えたいことがいっぱいあって、それを全部伝えようとしていた。
でも、それは自分のためだったのかもしれません。」

それが、その方の言葉でした。


2 問い直したいのは、技術ではなく「誰を見ているか」

この話を、1on1のセッションに重ねてみてください。

あなたは今、セッションの中で何を見ていますか?

クライアントを見ていますか。
それとも、自分がコーチ役として機能しているかどうかを見ていますか。

傾聴できているか。承認のタイミングは適切か。この質問は深いか。セッションの流れは良いか。

これらを確認しているとき、あなたの意識はクライアントではなく、「コーチとしての自分」に向いている可能性があります。


3 「できている人ほど」陥る罠

ここで一つ、僕の現場感覚をお伝えします。

この状態に陥りやすいのは、不勉強なコーチではありません。
真剣に学び、誠実に準備してきたコーチほど、深くはまります。

というのも、知識があるほど、セッション中に「確認すべき(又は、確認しなければならないと思いこんでいる)基準」が増えるからです。
傾聴の質、質問の深度、公正性、クライアントの変化などなど。
評価軸が増えるほど、自分やセッションを「評価するもう一人の自分」がセッションの中に常駐する。

その時の「評価するもう一人の自分」は、クライアントではなく自分を見ています。

多分、あの受講生も同じだったのでしょう。
勉強量が多いからこそ、「全部伝えられているか」を自分でチェックしながら登壇していた。
自分の中の一部は、聴衆ではなく自分のパフォーマンスを見ていた。

そしてそれは、僕が同じトレーニングを受けていた時に陥った構造と全く同じでした。
今でも、その未熟だった自分への悔しさは忘れることはありません。

なお、僕はトレーニング中にそこまで認知できませんでしたが、その受講生はすぐにフィードバックを取り入れて、劇的に改善されました。


4 クライアントが孤独になる瞬間

コーチが「自分がコーチとして機能しているか」を確認しているとき、クライアントはある意味で一人でいます。

言葉のやり取りはある。でも、コーチの意識はコーチ自身に向いている。

そのほんのちょっとの「不在」を、クライアントは感じます。
言語化はできないかもしれない。でも、「何かが違う」という感覚として、確かに届く。
少なくとも僕のところに来てくれるクライアントは、必ずと言っていいほど敏感に察知します。

本当の傾聴とは何か。
それはスキルの問題ではなく、意識の向き先の問題だと僕は考えています。
もちろんスキルは大切です。
ですが、意識が相手に向いていなければ、その「傾聴」スキルは逆効果になってしまうこともあるのではないでしょうか。


5 「忘れること」が、本物になる条件

ではどうすればいいのか。
正直に言うと、「こうすれば解決する」という答えを僕は持っていません。

ただ、一つだけ言えることがあります。
あの受講生に伝えたこととつながりますが、「全部自分のものにしたら、あとは全部忘れる」

技術を意識しなくなったとき、「うまくやれているか」への問いが消えたとき、はじめてクライアントだけがそこにいる。
本当にクライアントを見ているとき、おそらく僕たちは「傾聴している」とも「コーチとして機能している」とも感じていないはずです。


6 最後に

最近のセッションやコミュニケーションを振り返ってみてください。
あなたはクライアントや相手を見ていましたか。

それとも、自分がコーチとして機能しているかどうかを見ていましたか。


Genius Rushでは、コーチングの技術だけでなく、コーチ自身の「在り方」を深めたいと考えるプロフェッショナルの方々のサポートをしています。ご関心のある方は、お気軽にお問い合わせください。

僕がこのスタイルになった詳しい背景はインタビュー(外部リンクへ遷移します)でご紹介しています。