コーチングやカウンセリングの世界には、様々なタイプ診断があります。

性格診断、行動特性診断、強み診断、コミュニケーションタイプ診断。

これらのツールは本当に優れていて、人を理解するための有用な地図になってくれます。

僕自身、これらを学んできたし、初対面の方の見立てのヒントとして活用することもあります。

ただ、今の僕は、むしろタイプ診断から距離を取る方向に進んでいます。

タイプ診断が本来の役割を果たさず、むしろその人のコミュニケーションの選択肢が、知らず知らずのうちに狭まってしまう。
僕自身もそんな体験をしてきたし、たくさんのクラアントから同様の経験談を耳にしているからです。

なぜ、そんなことが起きるのか。
その問いに向き合わせてくれた、一つのセッション経験があります。


言動からのタイプ診断は、本当に安全なのか?

コーチングを学んで、人にセッションをし始めた頃、
言動が活発で、エネルギッシュな、あるクラアントとの事例です。

笑顔が絶えず、次々とアイデアを出し、行動も早い。
一般的なタイプ診断で言えば「積極的で行動的なタイプ」。

そう見立てた僕は、確信を持ってセオリーに従いました。
「こういう人には、同じような情熱やスピード感を持って伴走しながら、冷静さも加えるのが正解だ」
一般的には正しいアプローチだと思いました。

でも、なかなか成果は出ませんでした。
何かが噛み合わない。

そこで僕は、その違和感を相手に素直にぶつけることにしました。
「うーん、正直このセッション自体がうまくいっていないように感じるんだけど、今どう感じてますか?」

すると、その人はこう言ってくれたのです。
「実は、自分は行動する前に、しっかりと考えをまとめたいんです。
 そうしないと、どうも不安で、疲れる気がするんですよね。」

僕の思っていたセオリーが、その人の本質を完全に見落としていました。

その後、二人で話を深めていく中で、分かったことがあります。

その活発さとエネルギー、そして「こうなりたい」という強い意思。
それらが言動に反映されていたのは確かなのですが、同時に「他の人からの期待に応えよう」という無理もあったのです。

そして、その「他の人」の中には、僕も含まれていたのかもしれません。
今思えば、恥ずかしいほどに未熟な見立てでした。


その活発さは、本当にそのタイプを示しているのか?

ここで僕が学んだのは、シンプルだけれど重要なことです。

目に見える言動からだけではタイプ診断をすることは、困難で危険だ。

活発な言動は、その人の「本当のタイプ」を示しているのかもしれないし、示していないのかもしれない。

期待への反応かもしれないし、自分がこうなりたいという願いの現れかもしれない。

見た目から判断したセオリーは、その人の表層的な部分に基づいて組み立てられていることが多い。
でも人間は、表面と内面が一致しないことがほとんどです。

その時、僕がした選択は「相手に直接聞く」ことでした。

これが、僕の基本的なスタンスになっています。

違和感を感じたら、その違和感を信号として扱う。
そして、相手に素直に問い直す。
セオリーよりも、相手の言葉を信じる。

その時から、そのクライアントとの関わり方を変えました。
「検討しながら、並行して行動もスタートしていく」という方針に。

その人の本当の必要性に沿った形で。
すると、一気に状況は変わり始めました。


「窮屈だった」「決めつけられた」。そう感じるのはなぜ?

その経験の後、興味深いパターンに気づきました。

他のコーチングを体験した後に、僕のセッションにやってくるクライアント。
彼らから、似たようなお話をよく聞くのです。

「前のコーチには、すごく決めつけられている感じがした」
「コミュニケーションが窮屈だった」
「自分はこういうタイプなんだ、という枠をはめられた気がした」

この5年以上で、こういう話を30人以上のクライアントから聞いています。

個々の話を聞いていくと、パターンが見えてきます。
彼らは、「あなたはこういうタイプだから、こういうやり方が向いている」という見立てを受けていた。
タイプ診断そのものが悪かったわけではなく、その見立てが「その人の可能性を固定してしまっていた」のです。

相手の言動から引き出された「タイプ」というレッテルに基づいて関わることで、相手の選択肢や表現の幅が、知らず知らずのうちに狭まってしまっていた。

これは、言われる側からすると「決めつけられている」と感じるのだと思います。


有用なツールはなぜ、落とし穴になるのか?

ここまで言うとと、タイプ診断を批判しているように見えてしまうかもしれませんが、
僕の真意はそうではありません。。

タイプ診断は、(ものにもよりますが)本当に優れたツールです。

全く知らない相手と関わる時、何の手がかりもない状態よりは、ある程度の仮説があった方が見立ては立てやすくなります。
その仮説の助けになるのが、タイプ診断です。

ただし、です。

タイプ診断に見えるパターンと、その人の本質は別のものかもしれない。
セオリー通りの人間はほぼいません。

タイプ分類では説明できない、その人だけの複雑さと矛盾と豊かさが必ずあります。
必ずです。
そして何より重要なのは、その人の本当の必要性や本質は、相手の言葉と相手との対話の中にしかないということです。


あなたのコーチングは、タイプ診断を使っていますか?それとも使われていますか?

僕が思う落とし穴は、ここです。

「このタイプはこう」という枠組みの中で関わることが習慣化すると、その枠の中でしか相手を見られなくなる。
すると、相手は「タイプ」として扱われ、「その人」として見られることが減っていく。
これは、クライアント側には「決めつけられている」「窮屈だ」という体験として返ってくるのです。

タイプ診断は、あくまで初期の見立てのヒントでしかない。
相手を深く知るプロセスの中で、そのタイプ分類は何度も何度も繰り返し、リアルタイムで更新されるべきものです。

その「タイプ」が、固定化してしまえば、相手の可能性は狭まる。


では、どこに目を向ければいいのか?

タイプ診断は、本当に有用なツールです。
でも、それは道具に過ぎず、全てではない。
コーチが使うべき道具の一つに過ぎません。

では、相手の本当の必要性は?相手の本当のパターンは?相手の本当の複雑さは?

それらは、診断ツールの中には入っていません。
相手の中にしかないのです。

だから、僕は違和感を大事にします。
セオリー通りで上手くいかないことを感じたら、1つのシグナルとして扱います。

そして、相手に素直に聞き直します。
相手の言葉を信じます。

タイプ診断も活用しながら、でもそこに縛られず、相手という人間そのものを見ようとする。
その姿勢の中でこそ、コーチングは力を発揮するのだと、多くの人達とのセッションで実感します。

もし、何らかのコーチングを受けている中で
「なんか決めつけられている感じがする」
「コミュニケーションが窮屈だ」と感じるなら、
それは、コーチがあなたを「タイプ」として扱い、そのコーチがタイプ診断に使われてしまっているのかもしれません。

一方、「この人は自分をどう見ているのか、何度も問い直してくれる」
「複雑な自分を丸ごと受け止めてくれている感じがする」と感じるなら。

それは、コーチがタイプ診断を道具として使いこなし、常にあなたという人間全体を見ようとしているのかもしれません。

その違いは、結局のところ、コーチが「セオリー」と「クラアント自身」のどちらに主を置いているのか、ということなのだと思っています。

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詳しい背景はインタビュー(外部リンクへ遷移します)でご紹介しています。