先日、NLPを学んでいる方から
「笹原さんはNLPの解説をたくさんしているのに、ビリーフについては解説しないんですか?」
という質問をいただきました。
確かに僕がちゃんとしたセミナー以外で、「ビリーフ」について人前で話すことはありません。

NLPの世界では、
「制限的ビリーフを外す」
「思い込みを書き換える」
という言葉を、よく目にします。
実際に、そういうセッションをしている方もたくさんいらっしゃいます。

NLPトレーナーである僕が、
セッションの場において、クライアントのビリーフをまったく扱っていないかと言えば、
もちろんそんなことはありません。

むしろ、僕のセッションでは、
かなり本気でクライアントの「ビリーフ」に向き合います。

それでも僕は、
「ビリーフのいじり方」について公に語ることはありません。
恐らく、今後も語ることはしません。

今日はその理由を、簡単にまとめてみようと思います。

1 そもそも「ビリーフ」って何?

NLPにおける「ビリーフ」とは、簡単に言えば「その人が当たり前に信じている、自分だけのルール」のことです。

例えば、
「人は、他人の役に立つべきだ。」
「他人の役に立たない自分には、価値がない。」
「努力しないと成功しない。」
というようなものです。

これらは事実ではなく、あくまでその人独自のルール、言い換えれば「思い込み」です。
しかし、この思い込みが強すぎると、自分を苦しめたり、チャレンジを妨害(この妨害する思い込みを「制限的ビリーフ」と呼びます)したりします。

「もっと自分や家族の時間を大切にしたい」と思っているのに、
「会社の同僚に迷惑をかけられない、会社の役に立たなければ価値がない」というビリーフのせいで、
休暇を取ることをためらってしまうというようなパターンです。

だからこそ、多くの人が
「制限的ビリーフを外す」
「思い込みを書き換える」
といったアプローチで、クライアントに接していきます。

2 それは制限ではなく、オーダーメイドのお守り

ここからが本題です。
僕は、こういったビリーフを「邪魔なもの」や「悪いもの」だとは捉えていません

そのビリーフは、その人がこれまでの人生を生き延びるために、
必要に迫られて身につけた「鎧(よろい)」だからです。

過去のどこかで、あなたは傷つくのが怖かったのかもしれません。
親や周囲の期待に応えなければ、居場所がなかったのかもしれません。

「役に立つ人間である」ということで、自分を保護してくれる存在(例えば親とか)から見捨てられずに済んだ。

成功に向けて努力を積み重ねることが出来た。

つまり、今のあなたを作っているその思い込みは、あなたを守るために、安全に生き延びるために作られた、鎧でありお守りだったものです。
単純な二元論で「正しいか、間違っているか」を判断するものではありません。
単に、「生きるために必要だったもの」です。

3 「ビリーフを変える」ということ

問題なのは、その鎧の成り立ちを知らない他人が、
「重そうで大変だね。そんなの古いから捨てちゃいなよ」 と、安易に脱がそうとする行為です。

それが善意のアドバイスであっても、その鎧は相手にとっては命綱かもしれません。
僕はこれまで、ビリーフを書き換えられてしまったことで、バランスを崩した人を何人も見てきました。

「『心を開こう』と言われて無防備になった結果、他人の言葉に深く傷ついてしまった」
「ビリーフを変えた方がいい。」と言われたせいで、過去の自分を責める、自分がいた環境を恨む気持ちが消えなくなった。

そんな苦しみを手渡されてしまったクライアントさんが
僕のところにたくさん避難してきてくれました。

だから僕は、安易に「ビリーフの外し方」を教えることはしません。
それは、人の心のお守りを扱う、とても重く精密な作業だからです。

たった一言の選択ミスが、意図しない影響を与えてしまう。
一生消えないかもしれない痛みを埋め込んでしまう。
他人の「ビリーフ」に触れる、介入することは、そういうものだと思います。

4 それでも、手放すべき時は必ず来る

もちろん、一生その鎧を着続ける必要はありません。
変化のタイミングは必ず来ます。
それは、「戦場が変わった時」です。

子供の頃は戦場(厳しい環境)だったかもしれませんが、
今のあなたは大人になり、自分で環境を選べるようになっています。
平和な街で暮らしているのに、頑丈で重い鉄の鎧を着ていたら、きっと歩きにくいだけです。

「あれ? なんか最近、この考え方がしんどいな」
「今の自分には、もう合わない気がする」

本人がそう違和感を感じ始めた時こそが、手放す準備ができたサインです。
そして、その鎧を手放す決断をするのは、コーチである僕ではなく、クライアント自身です。

5 僕が提供するビリーフチェンジのスタイル

僕がセッションでやっているビリーフへのアプローチは、スキルを駆使して思い込みを消すことではありません。
やっているのは、驚くほどシンプルな「確認作業」です。

僕がするのは、2つの問いかけだけです。

「それって『思い込み』かもしれませんね?」 
「今もその鎧は必要ですか?」 

ただ、リアルな今の状況に気付くきっかけがあれば、
それだけで人は変われます。

6 信じて手放す

正直なところ、僕は一瞬でビリーフを書き換えるようなスキルも持っています。
ビジネス的には、それをPRして売った方が有利なことも理解しています。

それでも僕がそれをしないのは、
「クライアントがこれまでの人生で長い時間をかけて作り上げてきたものを、他人が軽々しく扱うべきではない」という僕のビリーフを大切にしているからです。

急いで答えを出すためではなく、
クライアントの大切な答えを奪わないために。
これからも、安易な「変え方」は語らず、無責任な「介入」を自制する。
ただ気付きのきっかけを提供し、それから先はクライアントと共に考え続けていきます。

僕のセッションは、
「試しにちょっと鎧を脱いでみようかな」と感じた時に、
絶対に安全でいつでも帰れる場所でありたいと思っています。

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