前2回(※)にわたり、「言い換えで終わらせない本当のリフレーミングとは?」というテーマでリフレーミングの土台として「無意識の地図を読む力」、そしてその地図の構造をどう見極めるかを解説しました。
※ 第1部『「言い換え」で終わらせない本当のリフレーミングとは?その1』
第2部『言い換えで終わらせない本当のリフレーミングとは?その2』
前2回をお読みいただければ納得いただけると思いますが、リフレーミングとは思考の柔軟性を高めること。
それは、出来事の意味を「変える」ことではなく、出来事との関係の結び方を変えることです。
今回はその実践編として、クライアントの内側にあるフレームを実際に動かすための、3つの具体的な手法を紹介します。

2 状況をずらしてみる(状況のリフレーミング)
僕のクライアントであるBさんは部下のCさんに対して、
「何度伝えても、なかなか行動が変わらない。」と感じていました。
そこで僕は、こう尋ねました。
「Bさんの話を聞いていると、Cさんの事をとても大事に育成されているように感じるのですが、BさんはCさんのどんなところを評価しているのですか?」
するとBさんの口から、
「粘りづよく挑戦し続けるところ。あきらめが悪く、へこたれないところ。」
という言葉が出てきました。
僕は静かにこう伝えました。
「Cさんの『変わらない力』が、Bさんから評価されている側面もあるんですね。」
その瞬間、Bさんは目を見開き、「それもそうですね!」と笑ったあと、
「ここを上手く使い分けるにはどうしたものか…」と、再び思索を始めました。
出来事やその特性そのものは同じでも、
その出来事や特性がおかれる状況をずらして見ることで、その出来事や特性に対して見えてくるものがまったく違ってくる。
状況をずらすとは、
出来事の「意味を置く場所を変える」こととも言えます。
それができれば、たった一言で思考は固さを失い、相手と現実との関係が静かに変化し始めます。
2 時間軸を広げてみる(時間のリフレーミング)
クライアントさんの話をきいていると、「いま、この瞬間」だけで出来事を判断してしまって、視野が狭くなっているという場面に遭遇することがよくあります。
けれど、その出来事を「1年後」「10年後」「人生全体」のスパンで見たらどうでしょうか。
以前、提携先との関係が上手く行かず、「この選択は間違いだった」と語るクライアントがいました。
そこで、僕は時間軸を少し広げて問いかけました。
「将来のあなたはこの経験を生かして、どんな力を手に入れているのですか?」
その瞬間、クライアントの表情がより真剣で厳しいものになりました。
「確かに…この経験がなかったら、人と関わることの大切さと難しさを知らずに、事業拡大の機会を失うか、無謀な拡大をしていたかもしれません。」
今という一点を離れ、人生という長い時間軸の中で見直すことで、「苦しい出来事」が「意味のあるプロセス」に変わっていく。
時間のリフレーミングとは希望や成長の種を、相手の未来へそっと蒔いていくような問いとも言えます。
3 視点を変えてみる(立場のリフレーミング)
そして最後にご紹介するのが、「誰の立場で見るか」という視点の変え方です。
同じ出来事でも、自分の立場、相手の立場、第三者の立場を行き来してみることで、その出来事の見えていなかった構造が浮かび上がることがあります。
Bさんはあるとき、Cさんが行動を変えない理由について
「理解はしているはずなのに、動けていない」と語りました。
そこで僕はBさんにこう問いかけました。
「もしあなたがCさんだったら、上司のBさんからどんな風に関わってもらえれば、行動が変化すると思いますか?」
その瞬間、Bさんは大笑いしながら言いました。
「もし僕が部下だったら、『君が上司だったら、こんな時にどう伝える?』って聞かれたらハッとするかもしれませんね。」
視点を変えるとは、相手の世界に一度身を置くこと。
その瞬間、相手が抱えてるものを「問題」としてではなく、「理解すべき他者が、理解に向けて与えてくれたヒント」として見る感性が生まれます。
そして、その感性そが、関係性を変える静かな原動力になるのです。
4 フレームを変えることは、生き方を変えること
繰り返しお伝えしていますが、
リフレーミングとは「相手の世界観を尊重した上で、相手の世界観を、相手にとってポジティブな効果が出るように動かしていくプロセス」です。
それは「出来事を都合よく書き換える」ことではなく、出来事・時間・立場というフレームを静かに動かすことで、自分と現実との関係を自然に変えていく営みです。
リフレーミングという思考の柔軟性を高める考え方は、他者への関わり方を変えるだけでなく、自分自身の人生の意味づけをも深めていきます。
フレームを変えるとは、生き方を変えること。
変えることが出来ない現実はそのままに。
そして、その現実と自分(又は相手)との関係の結び方をそっと変えていく。
その静かな変化が、やがて人生そのものを大きく動かしていくのではないでしょうか。
5 なぜ今、リフレーミングが求められるのか
現在のように変化の速い時代では、いつでもどこでも通用するような画一的な価値観や正解が存在しません。
同じ出来事でも、見方を少し変えるだけで、意味がまったく変わる。
それによって、人の行動も、関係性も、大きく動き出します。
だからこそ今、コーチ・リーダー・支援者に求められているのは、人の言葉に隠れた「フレーム」を見抜き、それを柔軟に動かしていく力です。
リフレーミングとは、まさにその「思考の柔軟性」を鍛える超実践スキルであり、それを支えるマインドセットでもあります。
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