こんにちは。
Genius Rushの笹原です。
皆さん、説得力のある提案のために「数字」を利用することが大切だと聞いたことがあるのではないでしょうか。
実際に、僕も営業活動や各種セミナー等で数字を活用して、自分の提案や主張の説得力を持たせるという手法をよく使いますし、間違いなく効果的な方法です。
これは、皆さんの中に「数字は噓をつかない」という考え方があって、「数字」というものに対する信頼が前提になっているものと思われます。実際に、「数字は噓をつかない」という言葉を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
では本当に「数字は嘘をつかない」のでしょうか。
とある事例から考えてみます。
1 あるアンケートを集計した数字
※ 実際にあった事例をもとに、事例の特定を防止する目的で、本ブログの論旨に影響を与えない範囲で、実際の事例から一部情報を変えて掲載します。
ある市役所が、市内の全世帯(50,000世帯)を対象に現在市内全世帯に紙媒体で配布している市報に関するアンケートを実施しました。
各設問と回答を集計した数字は下記の通り。
回答総数:1500件
問1 市報を読んでいますか。
全て読む 450件 (30%)
ほぼ全て読む 675件 (45%)
読む記事もある 360件 (24%)
読まない 15件 ( 1%)
問2 市報の発行頻度はどう感じますか?(現在は月2回)
ちょうどいい 1125件 (75%)
多い 360件 (24%)
少ない 15件 ( 1%)
問3 自由意見
・もっと若い人が興味を持つような内容にしてはどうか
・月2回配布するコストを考えては 等
2 アンケートから導かれた結論
この市役所では、このアンケート結果から、「市報を月2回、全世帯へ配布することは、市民ニーズの観点からも必要である。」と結論付けました。
確かに、アンケート結果を見ると、回答者の75%が「記事を(ほぼ)全て読む」し、「発行頻度(月2回)もちょうどいい」と回答しています。
これが「数字」が示した結論です。
果たして、本当にそうでしょうか。
3 改めて数字を全て確認すると
ここで、このアンケートにはもう一つ大切な数字があります。
このアンケートは50,000件を対象として実施し、1,500件の回答がありました。
回答率はわずか3%です。
更に、回答者の年齢構成も数字として公開されていました。
回答総数 1,500件
内 80代以上 180件(12%)
70代 435件(29%)
60代 405件(27%)
50代 195件(13%)
40代 150件(10%)
30代 105件 ( 7%)
20代 29件 ( 2%)
10代 1件 ( 0%)
この数字を見ると、前述「市報を月2回、全世帯へ配布することは、市民ニーズの観点からも必要である。」という結論は果たして正しいのでしょうか。
4 数字に意味を持たせるのは人間
今の状態で改めてアンケート結果を見るとどう考えられるでしょう。
ある人は、やはり回答者の75%がこう回答しているのだから、同様の結論を導くかもしれません。
ある人は「回答者はほぼ高齢者(60代以上が65%)で、現役世代はそもそも市報に興味もない。」という結論になるかもしれません。
ある人は「たった3%しか回答していないという事は、そもそも市報を見てもいない人が大半で、市報は不要である」と結論付けるかもしれません。
人によって結論はバラバラですが、「数字」そのものは嘘をついているわけでは無いことがお分かりいただけると思います。
それどころか、数字はあくまでも数字なので、これ自体に現実的な意味はありません。
この「数字」を読み取り、そこに「意味」を持たせるのは人間です。
ですので、「数字」を提示する、扱う人間がその数字のどのような「意味」を持たせるか、より端的に言えば「数字をどう利用して相手をどう誘導したいか」という意思によって、「数字が持つ意味」は簡単に変わってしまいます。
ですので、「数字は嘘をつかない」が、「数字を自分の都合のいいように使う人間はたくさんいる」というのが真実です。
※ 逆に言えば、それほど「数字を使う」ことは効果的で説得力があるという証左でもあります。
自分が何かをしようと思う時には、数字を味方につけておく視点は大切です。
5 文豪の残した言葉
あの『トムソーヤの冒険』の作者マーク・トウィンはこのように言ったと言われています。
「数字は嘘をつかないが、噓つきは数字を使う。」
もし皆さんに対して、やたらと数字で説明してくる人がいたら、その数字そのものだけではなく、その相手の人がどういう意図でその数字を示しているのか、他に関連する数字は無いのかを考えてみると、面白いものが見えるかもしれません。
※ 嘘つきは数字を使いますが、数字を使う人が全員噓つきという事ではありません。個人的には、誠実に数字を使って説明してくれる人が大好きです。
6 お知らせ
コーチングの師匠である稲垣陽子さん(国際コーチ連盟(ICF)認定マスターコーチ(MCC))と「才能発掘」について対談を行いました。
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